姿のCIの考え方で一つ大切なことは、姿の意味性″ということである。記念物―モニュメント(記念碑)、その典形的なものは、彫像や石碑などであるが、上野の西郷さんは立派なモニュメント(記念碑)である。西郷さんの彫像には西郷さんという人物の人格、ストーリー、その歴史的背景、といった誰もが知っている大きな意味性がある。人々はそれを知っているから、その塑(ソ)像に、それぞれ自分で素直に感情移入が出来るのである。もちろん、その塑像自体が持っている美術品としての価値、アートとしての表現力に、大いにあづかるところがあるとしても、なおも意味性の力は大きい。人々が、その塑像の西郷さんに親しみを感じ、西郷さんのストーリーを思い出し、今、この場所で西郷さんと、実は塑像であっても、出会ったことにエピソードを感じる。そこで、一諸に記念撮影ということになるのである。それに比べると、石に碑文を彫り込んだだけのモニュメント(記念碑)は人気がない。文字はビジュアルには思想を伝えない。その理由は先に述べたとおりである。モニュメント(記念碑)は、それを建てる側の人の思い入れや、自己満足だけでは、見る人の感情を揺り動かすことは出来ない。