モニュメント(記念碑)、誰もが知っている言葉、意味としては、記念碑、記念建造物、遺跡などと辞書には載っている。しかしこの言葉は例えば“犬、松”と言った普通の物質名詞とは違って抽象的な概念を指し示すに過ぎない。だから実際に“物”に直面して、はじめてこれはモニュメント(記念碑)であると定義できる。そこで、いざモニュメント(記念碑)を建てると言うことになると、その内容は何を構想したら良いのか最初から考えなければならないのである。家を建てるなら家の種類や構造を選択すればすむが、モニュメント(記念碑)の場合、テーマが特定の人物であるとか、物体である場合はデザインや表現手法の問題に取り掛かることも出来るが、テーマが抽象的なコンセプトのケースではそれを“姿のかたち”の物体に置き換える思考作業が必要となる。これは真に創造的な仕事であって、抽象的な概念をビジュアルなデザインに翻訳するに等しい全く飛躍的な思考作業である。
モニュメント(記念碑)と言う言葉から、ある人はスタチュー(塑像)を思い浮かべ、抽象彫刻のような物を想像する人もいるだろう。すでに現実に存在する物をその価値は別としても認識することは容易である。
阪神大震災から10年が経ち、その後、神戸では手作りの物も含めて千数百のモニュメント(記念碑)が建てられているそうである。そこには建てる人の強い思い入れがある。これを仮に第一種のモニュメント(記念碑)とする。二種目のモニュメント(記念碑)は企業や行政が建てるモニュメント(記念碑)で、勿論建てる目的は建てる側に在るとしても、受け手の側が評価し、その価値を認識してくれて始めてモニュメント(記念碑)に成るといった種類のモニュメント(記念碑)がある。
モニュメント(記念碑)を考えて欲しいという相談や、デザイン、製作の注文を受ける。そのモニュメント(記念碑)の内容、コンセプトを尋ねると、始めから人物とか具体的な物が決まっている場合はまだ良いが、殆どが抽象的である。
ある町の駅前にモニュメント(記念碑)を建てたい、町を象徴するエレメントはいろいろある。なかには平和、健康といった純粋に抽象的なコンセプトも出てくる。これと物体としてのモニュメント(記念碑)との間にはあまりにも大きな乖離が在る。
そこで先ず、モニュメント(記念碑)を建てようとする側、発注主の目的意識、を整理してみる必要がある。次にどうしたものを選択すればその目的を効率よく表現できるか、見る側の人々に正しく認識されるか、と言う思考段階へ進むことが出来る。
モニュメント(記念碑)を建てることの意味、目的、その効果を考える上で、“CI”(コーポレートアイデンティティー)についての認識は大いに参考になる。